介護の何に時間を取られるのか
在宅介護の場合、食事の用意、環境(主に下関係)を清潔に整える、消耗品を補充するのに介護者は膨大な時間を費やします。
とくに私が文字どおり消耗するのが、消耗品の補充です。いくら買っても補充しても買うものが出てきて、介護者を想像以上に疲弊させます。
あるとき、ふと自分が圧倒的にムダな時間を費やしているという思いにとらわれる。
そのときの気持ちは発狂したいような、そこに虚無感がないまぜになったような、なかなかこれまでの人生で経験したことのないものです。
〈私はいったい今何のために時間を費やしているんだろう〉
そんな思いがわき上がったが最後、もうここではないどこかへ逃げてしまいたい、やり場のない気持ちに襲われます。
私のようにある程度のことをプロのヘルパーさんに任せられている場合、することは、買い物と洗濯と掃除と、手続き、連絡、準備、用意、段取り……。
まだありますが、おおざっぱに言葉で表現してみるとそんな感じです。
それらに自分の日常の決して少なくない時間を割くことになります。
すべてが細切れの作業。仕事などできる状態でなくなっていくのは当然です。
生活のすべてを管理する大変さ
薬の管理一つとっても、カレンダー式のビニールの薬入れに、1週間分の薬を絶え間なく入れる。これだけでもけっこうな作業です。
ショートステイに行くなら前日には、朝、夜、就寝前とあらかじめ小分けされた薬が入った袋に、氏名、飲む日付、曜日、いつ飲むかを一つひとつ明記します。
地味な作業ですが、命を守る大切な薬と思いとても神経を使います。
平日の月曜、水曜はデイサービスに行っているので、その着替えの用意。靴下、下着、ブラウス、スカート、これらを前日に選んでそろえます。
洋服の管理は春、夏、秋、冬、オールシーズン、もう着られないものを処分しつつ、クリーニングに出します。
自分の洋服の管理だけでもままならないのに、これもなかなか手のかかる作業です。
スカートのゴムが伸びると、お直し屋さんに持って行って取り替える。母は身長が一番高いときから10センチほど縮んでしまったので、ほとんどのスカートを10センチ近く裾上げにも出しました。セーターやブラウスにほつれや破れがあれば、それも随時お直しに出しています。
パジャマ、靴下、下着のシャツは微妙な季節の変化に合わせて、素材を季節に合ったものに変える。パジャマなら春先、真夏、秋、真冬の4パターンを買いそろえています。
補充をし続ける毎日
食事は朝はゆで卵とヨーグルトを食べさせているので、なくなれば買ってくる。卵は買ってきたその日にゆで卵にして冷蔵庫に入れておく。果物のジュースも好きなので、100%のりんごジュースを買っておき、なくなったら補充。
1箱(900㍉リットル)などあっという間に飲んでしまうので、一日おきに買っている感覚です。
他に好物のたくあん(塩分が高くて本当はよくないですが、好きなものを食べさせるようにしています)、梅干し(減塩)も好きで健康にもいいので、それも補充し続ける。
夜は冷凍の宅配弁当をインターネットで注文していて、一度に7セットほど注文し、なくなった頃合いを見計らって注文です。
ご飯は2合炊いては、小分けして冷凍しておく。ときにはたけのこやとうもろこしなど季節の炊き込みご飯をつくって、外出できない分、食で季節を感じてもらうように工夫しています。
冷たいお水が好きなので、夏は氷もつくるのも必須です。
リハビリパンツと尿もれパッドは月1回くらいの割合で補充。ポータブルトイレの消臭シートも買い置きが欠かせません。
今書いたのは買い物を伴う作業的なもので、ざっと思いつくだけでもこれだけすることがあります。
これらに今までいったいどれだけの時間を使ってきたのか。こうして書いただけでも、なにか途方もない気持ちになるのが正直なところです。