名もなき介護

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どうしようもない「自分の時間を奪われる」感覚

私が思う介護で大変なことに、「自分の時間を奪われる」感覚との葛藤があります。この感覚といかに付き合っていくかも、私にとって非常に大きな問題です。

どれだけ時間が大切でありがたいものなのか。自分が過ごしたいように自由に生活できることが、どれほど貴重でありがたいか。介護をしてわかったことです。

では、具体的に何に時間を取られるのか。

いちいち挙げればキリはないですが、その筆頭が洗濯です。

母は便を漏らすことがあまりないので大変助かるものの、尿失禁はしょっちゅうです。パジャマ、シャツ、防水シート(尿でベッドの敷パッドを汚さないための介護の必須アイテム)のワンセットを洗濯するのは、ほぼ日課です。

これに掛け布団が加わることもあり、そのたびにコインランドリーに行って、またそれを取りに行く。夏場はいいですが、冬はわざわざ行って帰ってを繰り返すのは、なかなかつらいものがあります。

そんなことを繰り返すたびに、これはいったい何の作業なのか、何の意味があるのかと、だんだん呪いたくなるような気持ちになってきます。

まさに自分の時間を奪われている、その感覚以外のなにものでもありません。

大変な紙類の管理

おむつ類も普通のリハパン、夜用の大きなテープ式のものの2種類を使っていて、パッドも普通サイズと大きいもの2種類、計4種類を使い分けているので、常にそれらの減り方を気にし、補充。

ポータブルトイレに入れる消臭シートも買い置きを確認して、都度補充します。トイレットペーパーも同様です。

また、必須なのが使用済みのオムツ、パッド類を捨てる際に包む新聞紙です。

新聞は情報を得るにはもはやインターネットのニュースで十分になってしまいましたし、ヒモでいちいち縛って出すという後処理が面倒で介護を始めて購読をやめました。

それが母の尿失禁がしだいに頻繁になり、おむつ類の処理に新聞紙が必須になったのです。新聞紙は自宅マンションのゴミ置き場からときどき拝借してくるようになりました。

読む以外で新聞紙が必要になる日がくるとは思ってもみませんでした。

こうして挙げただけで、なんとさまざまな紙類を使っていることか……。
これらを管理するだけでも一仕事です。

介護は名もなき作業の連続

一般的に主婦がしている料理、掃除、洗濯といった一般的な名詞ではくくれない「名もなき家事」というものが話題になったことがありました。

これは例えば、タッパーのフタと容器を正しく組み合わせるとか、食器を拭く・片付ける、ゴミを集める、トイレットペーパーがなくなったら補充するというような、はっきり名称をつけられない家事を指します。

介護こそ、この名もなき家事というのか、名もなき作業の連続といえると思います。

名もなき家事は、家族に「やってよ」と協力を仰げば多少は解決されることもあるでしょうが、ワンオペ介護で誰も協力をお願いできる人のいない場合、そうはいきません。

項目は数えたらキリがなく、普通に生活していける分には必要のないものばかりです。

例えば母の場合、介護ベッドの下に転倒防止のためのゴムマットのすべり止めを敷いています。

母は2020年10月に腰の骨の圧迫骨折をしてから食卓前の椅子に移動できなくなり、介護ベッドの縁に腰掛けて食事をとるようになりました。食卓代わりにしているのはニトリで買った丸椅子で、この上に食べ物を置いて食べています。

なので、食べるときにこぼしたご飯粒や食べかす、汁物などがゴムマットに落ちてこびりつくので、このゴムマットを洗うという作業もあります。

ご飯粒や食べかすのこびりつきはタワシでこすっても取れないほど固く、人差し指で爪の神経が触れるほどひっかかないと取れません(その後、マイナスドライバーでこそげて取るというワザを編み出し、解決しました)。

他にも下半身を拭くタオルを、普通の洗い物とは別に手洗いすること。

介護ベッドの下にある金属部分に足のすねをぶつけないようにバスタオルを巻いてガムテープで張り付ける作業……。

母に合わせたパーソナルな独自の作業が湯水のようにわいて出てきます。

名もなき介護に当たり前ながら、報酬は一切ありません。

自分の時間をいったいどれほど介護に使ってきたんだろう……。

自分で選んでやっていることですが、名もなき介護があまりにも膨大で、押しつぶされそうになりながら毎日が過ぎていきます。

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