命を預かっているという感覚

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重要な薬の管理

在宅介護をするうえで大変重要なのが薬の管理です。

母は2016年5月の心臓手術後あたりから、1週間のポケット式のお薬カレンダーに入った朝の薬を2回飲む(月曜なら月曜分と火曜分をいっぺんに飲んでしまう)というようなことが起こりだし、自分で管理して薬を飲めなくなりました。

つまり、手術を経て認知症も進行したのだと思います。

そこから訪問介護のヘルパーさんに本格的に毎日来てもらうようになり、服薬に加えて食事の配膳、排泄介助をしてもらうようになったのです。

母は近所の在宅医療をしてくれる信頼のおけるかかりつけ医に、月2回往診に来てもらっています。

処方されている薬は、朝7錠、昼はなし、夜1錠、寝る前に睡眠薬を1錠です。

薬局であらかじめ袋に小分けにされた薬をお薬カレンダーに入れて、なくなり時を見計らい補充するのが私の重要な仕事です。

このポケットに薬を入れる作業をしているとき、私は自分が母の命を握っているような思いを強くします。

在宅介護で気を抜けない3つの要素

介護は介護される人の命に直結することを請け負って、手助けする行為です。

薬と水分と食事。この3つが私が最も気を抜けない肝になるものだと思っています。

ただ、介護者からすると、それがプレッシャーにもつながります。私はこれまで母と自分の2人分を生きているという感覚によく襲われてきました。

自分が母の手や足になっている。母は飲みたいときに水1杯自分でくむこともできません。

私は自分だけの人生を生きるのだって一杯一杯なのに、もう一人の、しかも命を預かる? そう考えただけで胸のあたりがつかえるように息苦しくなる。今も多少軽くなったとはいえ、その思いに変わりはありません。

そんな、命を預かるなんて大げさな。もっと軽い気持ちでやればいいじゃないと思う方もいるかもしれません。でも、いつ救急車を呼ぶかといった大きな決断から、いつ水分を与えるか。そんな小さな選択まで、すべて自分だけでしていくのはなかなか厳しいものがあります。

介護者が感じる責任とプレッシャー

ワンオペ介護をしていると、そんな緊張感とプレッシャーですぐ一杯になってしまうのです。

親が目の前で苦しんだり、痛がったりするのを見るのは本当につらいことです。その苦しさ、痛みの裏にひょっとしたら重大な疾患があって、今すぐ命にかかわることかもしれない。

介護1年目の2016年9月、母は恐らくなんらかのサインを出していたのだと思うのですが、私がうまく読み取れず病院への搬送が遅れてしまい、かなり重度の尿路感染症になってしまいました。

その回復に大変時間がかかり、せん妄状態が1カ月ほど続き、結果的に認知症が一気に進んでしまったのです。

せっかく難しい心臓手術が成功したのに、私がうまく気づけなかったことでその成功をふいにしてしまったような思いもあり、もうあんな思いはしたくない。絶対に母のサインを見逃さず気づいてみせる。

そんなふうに私はよくも悪くも母の命を預かっているという思いを強くしてしまったのだと思います。

個人差はあるものの、介護者は常にどこかでそういったプレッシャー、責任感のおもりをずっしり背負って日々介護していると思います。

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